映画「秒速5センチメートル」には小説が2つある。
1つは監督が描いた映画に忠実なもの。
もう1つは監督とは別の人が描いたone more sideである。
one more sideも読んでみた。
よかったところ
第1部桜花抄は明里の視点で書かれている。
映画や監督の小説では明里の心中はあんまり出てこないので、イマイチ何を考えてるのかよく分からなかった。
でもこの本には詳細に書かれている。
転校を繰り返して周りに馴染めず怯えて暮らしていた時に、貴樹に出会うのだ。
明里の怯え具合が結構なボリュームで説明されている。
この背景が分かったのでより貴樹の存在の大きさが理解できた。
また「小説家の人が描いたらこんな表現になるのか〜、さすがだな」というところがたくさんあった。
第2部コスモナウトは貴樹の視点。
映画や監督の小説では、貴樹は何を考えてるのかよくわからない不思議な人。
花苗に対する気持ちもなんだかよく分からなかった。
思わせぶりなことを言う割には、距離をとってくる。
でも、この本を読むと分かる。
貴樹は意外と花苗に好意を持っていたのだ。
そこがこの小説を読んで一番よかったと感じたところ。
「この子が夢に出てくる草原の女の子かもしれない」と淡い希望を持っているのだ。
結局違ったんだけど、少なくとも映画や監督の小説よりも救いがあった。
イマイチだったところ
この小説では、貴樹は明里への未練を引きずってるように見えない。
貴樹は、明里との岩舟での出来事が「完全なるもの」と感じたために、そのあとの出会いや体験に虚しさを感じて生きていく。
コレジャナイ感。
それで病んでいる。
第3部で特にそれを感じた。
全然未練とかじゃないんだね、って。
そういう捉え方もあるのか〜と思ったけど、監督による映画、小説とは、大分違うように感じた。
「完全な体験」から解放されるストーリー。
そういう膨らませ方もあるのか。
第3部は描写が映画に忠実だからか、ブツ切れのシーンが多くて読みにくかった。
舞台の台本みたい。
あの映画を小説にするの難しいよね。
まとめ
良い点、イマイチな点とあったけど、総合的には読んでよかった。
花苗ファンは救われること間違いなし。
これで映画、監督の小説、漫画、このone more sideと制覇した。
その結果、また映画を見返したくなった。
なんて不思議な魅力がある作品なんだ!!
今回読んだone more side.